Cloverfield

adf2008-04-27


マンハッタンを突如襲った謎の大惨事、その一部始終を偶然記録したホームビデオカメラの映像という体で語られる映画。この演出方法がとにかく素晴らしくて、まるで大惨事を体験しているかのような臨場感と緊張感を映像に与えていて、僕の心拍数は映画の間中上がりっ放しだった。

奇抜な演出方法の割には、ストーリーライン自体は典型的なデザスタームービ的な割とありがちなもので、登場人物のキャラクターやアイデンティティも丁寧に分かりやすく印象づけている*1ので、事件の全貌が分からず混乱を疑似体験することはできるけれど、映画の中で何が起こっているのかを追えずに本当に混乱することはないので、きちんとハリウッドのビッグバジェット映画として成立している。

この辺り登場人物から一定の距離をおいた視点で記号的に扱い、制作者としての愛情や主観的な感情といったものを登場人物に背負わせることをしないスピルバーグ監督*2とは対照的だと思った。だからなのか、スピルバーグ監督の映画に比べて死に対する表現は割と感傷的というかウィットで、状況が状況だけにあっさりと命を奪われる人は多くいても、スピルバーグ監督のいつもの映画みたく大した意味もなく、まるで紙くずとか虫けらのように人々の命が奪われたりする*3表現はほとんどなかった。

ところで、もう言い尽くされているコメントかもしれないけど、この映画の真の主人公とも言えるビデオカメラの性能が凄すぎ。超長時間バッテリーで多機能、しかも初代ゲームボーイ*4並に頑丈で、NASAで開発されたのかと思った。

*1:この映画のプロデューサーは大ヒットしたテレビドラマシリーズの「Alias」とか「Lost」のプロデューサーのJ・J・エイブラムスさんなのだけれど、ここら辺のキャラクターの立たせ方は流石に見事。監督を勤めた「M:i:III」も単なるトム様の俺様映画ではなく脇役の魅力が光るナイスな映画だった。

*2:基本的に人間一般に対する愛情が薄いというか、あまり興味がないのだと思う、彼は。巨大ザメとかティラノサウルスとか戦車とかに夢中なので。

*3:シーンを盛り上げ、愛するクリーチャーの見せ場を作る為にまるで紙吹雪だとかドライアイスだとかみたいに殺戮シーンを入れたがるバーグさんが一番怖いよ、僕は。

*4:小学生男子が泥だらけの手で触ったり、走行中の自転車から落としたり、武器として使用したりと、全力で手荒く扱っても平気なオーパーツ湾岸戦争の時に空爆で焼けこげたゲームボーイが起動したという都市伝説があるけれど、割と信憑性高いんじゃないかと思えるくらい頑丈