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adf2009-12-30


カールといってもおじさんじゃなくて、じいさんが主人公のピクサー最新作!3Dで鑑賞、初飛び出すピクサー映画。赤フレームの不思議メガネで見る喜び。マンガ祭りでおなじみの赤と青のセロファンのメガネとは全く違うよ、未来って感じ。ただ、本作は通常版の鑑賞が基本で、3Dでも見れる方式みたいで、立体感を強調した演出はそれほどなく、飛び出す感動は控え目。それでも空のシーンの浮遊感は3Dの効果が大きいと思う。

カールじいさんとその最愛の妻の出会いから二人の生活と別れまでを描く冒頭の数十分のシーンが、本作で最も素晴らしい場面であることを否定する人は多くないはず。グッとくるのを飛び越えてウルっときちゃう文字通りの名シーン。冒頭にサイレント風な演出でエモーショナルで美しいシークエンスを配置し、その後にアクション&アドベンチャーやコメディをノンストップで続けるという構成は、前作『ウォーリー』でも印象的に用いられていて、ピクサーの新たなスタンダード化しつつあるみたい。子供のテンションが高く飽きがくる前に、まず大人(親)のハートを捕まえておいて、後はスラップスティックでキッズのハートを逃さない、ピクサーメソッドにキッズだけじゃなく僕もメロメロ。

ただ本作はスラップスティックパートに入った後のドラマの力が若干弱くて、観客の感情はわりと尻すぼみな感じになってしまう。これは冒頭のシーンのデキが素晴らしすぎるのもあるけど、物語を引っ張る役割を持つ少年のキャラクターの力が弱く、彼とカールじいさんのエピソードが唐突な感がしてしまうことが理由だと考えられる。少年、犬、鳥とキャラクターが多く、どうしてもカールじいさんとそれぞれのキャラとの関係性が薄く感じられてしまうのも原因。あとヴィランが全面的な悪ではなく、かといって共感も難しいキャラなのも後味を悪くしているのかも。

とはいえ、冒頭のシーンだけでも入場料の元が取れるくらい素晴らしいし、全体を通してさすがピクサーな高クオリティー。あと喋る犬の首輪欲しい。