(500) Days of Summer

adf2010-01-10


若者の街/渋谷にて、新人監督マーク・ウェブの長編デビュー作。僕の脳にアイスクリームスクープみたいなものをぶっ刺して、吸い出したアノ彼女との記憶を300人の前でスクリーンに映し出されるような、まさに『僕の』映画。

映画は徹底してジョゼフ・ゴードン=レヴィット演じる主人公、トムの視点で語られており、そこにはズーイー・デシャネル演じるヒロイン、サマーからの視点は全く存在しない。だから多くの女性視点からのラブストーリーとは逆に、本作では肉体が繋がった日の記憶がエモーショナルでテンション高く描かれるのに対して、心が繋がった日はそれほどドラマティックに描かれておらず、そもそも肝心なサマーの話の内容は全く聞こえなくて、ただ彼女が言った「この話したのは、あなたが初めて」という言葉だけにフォーカスして心が繋がった確信しているので、本当はどうだったのかは定かではない。

この場面に限らずサマーの心の内は全く語られず、コピー室で、雨の日の夜に、あの映画を観た後に、サマーが何を考え感じていたのかは、数学者にとってのフェルマーの最終定理のように、予想することはできても答えが出ない。男である僕にとって、女性とはそもそもそういうもので、だからこそこの映画は僕の映画なのだろうと思う。

本作で最も印象に残った場面は、思い出の場所で偶然再会するシーン。余裕を見せて格好良く振るまおうとするも、結局情けなくて痛い反応しかできない主人公の姿が、自分自身とオーバーラップしすぎて困った。別れ際に「君と出会えて良かったよ」なんて、格好良く言い放てる男なんてフィクションの中にしか存在しなくて、現実は泣き出しそうな顔でなんとか「幸せを祈るよ」と、負け惜しみのように吐くことしかできないリアリティー

本作は男女で観に行くと、感想や意見が別れて楽しい*1。でも、倦怠期のカップルには危険なので気をつけて。

*1:特に、友達の結婚式でのサマーの振る舞いについては、男女で受け取り方が大きく変わるみたい。