Toy Story 3

adf2010-07-17

みんな大好きトイ・ストーリーの第三作目は、まさかのディストピアもの!

時の流れとともに数を減らしながらも、可能性は低いけどいつか来るかもしれない幸運な未来*1を夢見て暮らすオモチャ達が、未曾有の変化*2により住処を追われる不安の中、不運なアクシデントによって辿りついた場所は、表面上は不安とは無縁のユートピア!でも実際は支配者が全てを統制する極端な管理社会だった。という前半から、オモチャ達の脱出劇を描く中盤までは、典型的なディストピアもののプロットで物語は進む。もちろん看板作品にふさわしく、アクション&サスペンスの演出、お馴染みの数々のパロディやコメディ描写*3まで、全てが超超ハイクオリティーで、パーフェクトなエンターテイメント*4となっていて、ピクサーさんのエンタメモンスター*5っぷりはいつも以上にすごかった。

ピクサー製エンターテイメントの最高峰である本作は、同時にトイ・ストーリー三部作の最後の作品*6でもある。本シリーズは毎回、オモチャにとって何が一番幸せなのかをテーマに掲げ、その命題に答えることでハッピーエンドとなる構成になっている。一作目ではオモチャは持ち主の子供*7に遊んでもらうことで誰にでもなれるし何でもできる*8ということが、二作目では持ち主が成長しいつかは捨てられる運命にある消耗品であっても子供に遊んでもらえることこそが一番ハッピーであることが、それぞれ語られる。ただ二作目ではアンディがまだ子供のままだったので、ジェシーのエピソード*9への答えは本当の意味では出ないままとなっていて、本作ではこれ以上ない程美しくパーフェクトな形でこの命題に答えている。

絶対的で残酷でさえある時の流れも『思い出』にはかなわないことを教えてくれるラストシーンは、キラキラするくらい美しい。

*1:アンディの子供と遊ぶ

*2:持ち主であるアンディの大学への進学による引越し

*3:本作ではバービーの付属品ことケンさんがコメディー部分で大活躍!

*4:これ以上のクオリティーのエンターテイメントは存在しないんじゃないかとすら思う。

*5:エンタメ無双

*6:一作目から三部作想定で制作されたわけではないけれど、本作は三部作の完結作というコンセプトで制作されたらしい。もちろん四作目が作られる可能性も全くのゼロではないだろうけど。

*7:アンディ

*8:プラスチックの大量生産商品は本物のスペースレンジャーになれるし、古いカウボーイ人形は彼(彼女)の大親友になれる。

*9:いつか必ずくる持ち主との別れ