告白

adf2010-09-21

今最も名前で客の呼べる日本人映画監督こと、中島哲也監督の最新作。湊かなえ作の同名ベストセラー小説が原作だけれど、原作は未読。でも本作はおそらくこの原作のベストな映画化であり、現在の日本でここまで監督の作家性を前面に押し出した映画がヒットするのは素晴らしいってことだけは分かった。

公開時期が近いことやR15+指定であることからか、本作は「ヒーローショー」と並んで評されることが多くて、確かに『未熟』な若者に対する大人からの強烈なカウンターパンチ(もしくは説教)を放っているのは2作に共通した点だと思う。ただ若者を上から目線で『未熟』であると詰りながらも、そんな若者への愛情から突き放すことができなかった井筒監督と比べ、中島監督は躊躇なく奈落の底に突き落とす*1

ストーリーは過激ではあるけれど、サスペンスとしてもミステリーとしてもそれ程独創性に富む訳ではなく、どちらかと言えばよくあるタイプの話。でもケレン味溢れるというかほとんどケレン味のみの中島監督らしい映像表現*2によって生々しくもケミカルな強烈さがあって、それはユッケにドンパッチかけたみたいな強烈なイメージ。

中島監督は映画の全ての要素を完全にコントロールしている。生徒役の演技は彼らの若さを全く感じさせない程の高クオリティーで、現場での監督の恐ろしさを容易に想像できたりした。そんな中でも松たか子さんや木村佳乃さんといった大人キャストはさすがの貫禄で、特にファミレスからの帰り道に嗚咽を漏らした後すぐに一笑に付す松たか子さんのシーンは凄かった。女優魂

*1:典型的な怪談話な展開で何故か幽霊にブチギレて幽霊をボコボコに殴り倒して泣かせてしまう、2ちゃんねるの有名なコピペがイメージとしては近いかも

*2:全体にブルーを強調したり、CG的な過剰演出を多様したり、本作では特にスローモーションが印象的に使われている