Rise of the Planet of the Apes

adf2011-11-04

かの名作『猿の惑星』シリーズのエピソード・ゼロにしてシリーズを新たにリブートする作品。人種差別や奴隷制度に対するアナロジーがふんだんに盛り込まれ極めて社会風刺的なSF作品であった前作シリーズから、その要素をばっさりと削ぎ落とし、代わりに拝金まみれの医学・製薬界や実験動物の問題、狭くなった世界におけるアウトブレイク等の現代的な社会風刺要素が盛り込まれている。もちろん進化と(種の)淘汰というシリーズ共通の大きなテーマは本作でも健在。

ただ小難しい社会風刺は本作の本質ではない。プリズンブレイクから暴動の首謀者に、そして革命を成し遂げる主(猿)公シーザーの英雄譚であり、すなわち本作の本質はは正統派エンターテイメントだ。英雄譚であるからこそ『ヒーロー』がいかに魅力的で、彼にどれほど感情移入できるかが重要となるのだけれど、ルパート・ワイアット監督の演出とアンディ・サーキスの演技力は、無機質なCG製の猿を魂を持たせることに成功している。終盤までのほぼ全編を通して一言も発さず*1ジェスチャーと表情*2だけで観客からの共感を得、猿なのに男前にすら見えてしまうその映画技法的なテクニックは驚くほどハイクオリティ。

チョコチップクッキーで人(猿)心掌握するシーザーさんは真のリーダーであり、ドラッカーさんなんて目じゃないと思った。俺もゴリラさんやオランウータンさんとかと一緒に、シーザーの兄貴について行きますゼ!な気分。あと木登りしたくなった。

*1:溜めに溜めてアノ単語が発せられるカタルシスの大きさは今年の映画で一番じゃないかと思った。

*2:特に眼力