哀しき獣

adf2012-01-20


本作はナ・ホンジン監督版の「第9地区」だと思う。野蛮で動物のような飯の喰い方、その人間離れした戦闘力、痛みや死への(虫みたいな)強い耐性とか、ミョン社長をはじめとする中国朝鮮族の皆さんは言葉の通じるエビ星人のようだし、彼らが暮らす朝鮮族自治州に漂う世紀末スラム感はヨハネスブルグのエイリアン隔離地区のそれに近い。

映画の構成も、朝鮮族自治州でギャンブルと借金にまみれ暮らすタクシードライバーの負け犬生活をNHKドキュメントのように追う冒頭から、クライムサスペンス・アクションを経て、韓国版グランド・セフト・オート化するクライマックスまでリアリティラインを引き直しながら展開していくのは、モキュメンタリーからSFアクションへと展開した「第9地区」みたいだった。結局は夫から妻への愛の物語で終わるところも含めて。

リアリティラインの変化と合わせて、手持ちカメラでの近接視点から定位置カメラからの遠い視点にするみたいな「第9地区」的な演出の工夫はもっとあった方が良かったとは思うけれど、ミョン社長無双が見れただけで1800円はペイできていると思うので無問題!