High Fidelity

無駄だと分かっていても、強がってみせたりするのはカッコイイ男になりたいからだ。見かけがどうとかじゃなくて、文字どおりのイイ男。クソみたいなプライドのために強がってみせるような男が、イイ男になんかなれないのは分かっているのだけれど。いや、そもそも男っていうのはカッコ悪いものなのかもしれない。


僕の持論に女の失恋は悲しくて、男のそれは情けなくて格好わりぃっていうのがあるのだけれど。男が人生で一番格好わるい瞬間っていうのは、失恋した直後と失恋する前に嫉妬に狂っているときなんじゃないだろうか。


それは僕自身も例外じゃなくて、今まで生きて来たなかで自分が言った一番格好わるいセリフは、ベッドの中で以前フラれた相手に言った「1回だけ」だったりする。


彼女とはヤることはヤってたけど、別に付き合ってたわけじゃなくて、映画や音楽の趣味が合うからたまたま一緒にいるみたいな関係だった。でも、若かった僕は、そのうち当然付き合うことになるだろうなんて漠然と思っていた。今から思い返してみると、交友関係とか考え方とかどう考えても合わないし、そもそもお互いがお互いに求めていたものが違い過ぎるのだけれど。とにかく、そのうちやっぱりそんな関係にも無理が生じて、別れっていうか、一方的に僕の方がふられてしまった。


で、それからしばらくして何かのパーティーで彼女と合った僕はベロベロに酔っていて、帰れなくなった僕は、近所の彼女の家に泊まることになった。いや、酔ったふりしていなかったっていうと、それは嘘になるけれど。でも、フリじゃすまないくらい酔ってもいた。で、とりあえずベッドで一緒に寝てみて、とりあえずちょっかい出してみて、拒絶されたあげく、出たのが上記のセリフなのであった。