He Believes In Time Machines

荷物をまとめて出ていこうとする彼女に

「最後に一つだけ教えてくれ、アイツは俺よりもよかったか?」
「それは分からないよ、まだしてないから」

その夜、彼は笑顔を押さえることができない。何も解決したわけではないのになぜか幸福感に満たされている彼は”まだ”っていう単語の持つ意味に気付かない。いや、気付いているのかもしれないけれど、気付かないふりをしているのかもしれない。


それから暫く経って、いよいよ2人の関係が修復不可能になった頃、彼は彼女に再び尋ねる。

「アイツとは寝たのか」って
「あなたは私になんて答えて欲しいの?」
「俺は君にしてないって、答えて欲しいよ。そして、それが真実であって欲しい。」
「残念だけど、私にはそう答えることができないよ。」

電気を消した部屋で、独り爆音で失恋ソングを聞きながら涙する彼は、それでも彼女からの電話に受話器を取る、何かを期待して。


かっこわりぃ。


ジョンキューザックはその後、父親を亡くした悲しみに暮れる元彼女とカーセックスしてヨリを戻すのだけれど、そんなものはフィクションにすぎないってことは誰にだって分かっている。

現実での彼はタイムマシーンの存在を信じるしかないのだ。過去に些細なことが原因で起こったすれ違いを解決するためではなく、彼女をアイツのもとに行かせるのを阻止する為でもなく、自分と彼女が出会わせないようにする為に。