折角の凛と澄んだ青空に、飛行機雲。
東京までの飛行機は、それ自体はすごく速いはずなのに、距離が縮まったようには感じられないのはなぜだろう。
そもそも飛行機には現実感が欠如していて、だからに違いない。あんな巨大な鉄の塊が飛ぶのなんか信じられない、とかじゃなくて、飛行機の中で50分あまりすごしたら、それで東京なのが信じられないんだよ。僕が飛行機にのってる間に、その周りの景色がドリフみたいに(そう、あの音楽に乗って)変わっていってるんじゃないかって、そういう感覚。
それでも着陸時には、僕の意識はいやおうなく現実に引き戻される。着陸失敗したらどうしようっていう不安、死への恐怖の為に、だ。それは、セックスの終わりに、自分のしていることが愛を交わすことではなく、DNAを吐き出して快感を得ることにすぎないと気付くことに似ている。
でも、そんなことはすぐに忘れてしまうのだけれど。僕らに必要なのは理論整然とした真実じゃなくて、きれいな嘘なのだから。