Gran Torino
監督、プロデュース、主演をクリント・イーストウッドが務めた激しくハートに響く大傑作。実は1ヶ月ほど前に観たのだけれど、作品パワーが強すぎて、あと実生活が多忙だったために感想を書いていないままだった。
古き良きアメリカンイズムの継承とか、ダーティーハリー(暴力)的な正義との決別とかといった作品のメインテーマは散々色々なメディアでかたりつかされているけれど、本作において最も重要なエレメントはクリント・イーストウッドが演じるコワルスキー老人のキャラクターそのものにある。
へそにピアスをつけた孫娘や老人ホーム暮らしをすすめる息子夫婦など、気に入らないことや人物に対して犬のようにうなり声を上げ*1、綺麗に手入した庭の芝生とピカピカに磨いた自慢のクラシックカー(グラン・トリノ)を見ながら庭でビールを飲むことが一番の楽しみで、行きつけの床屋のオヤジとは毒たっぷりで辛辣な軽口*2を叩き合う。本作の序盤から中盤はとにかくそんなコワルスキーさんに愛着がわくように作られていて、それは暴力そのものに対する深い憎しみが込められた衝撃的なシーンを経ての終盤、そしてハートを揺さぶられる結末でも変わることなく、むしろ愛着と愛情はより大きくなった。コワルスキーはグラン・トリノであり、古き良きアメリカの象徴でもあって、映画を見終わったあと僕はアメリカンな価値観への愛着を大きく深めたのです。
それにしても、僕もいつかは行きつけの床屋と罵り合えるような素敵な爺さんになりたい。今はせいぜい美容院のお兄さんとサッカーの話するぐらいなので、全然だめだよそれじゃあ。