Inglourious Basterds

adf2009-11-24


僕の最も好きな映画作家の一人、クエンティン・タランティーノ監督の最新作にして大傑作!本作でも練り込まれた魅力的な会話のやり取り*1や、突き放した視点でドライに描かれる暴力と死の描写などのQTのワン&オンリーな作風は健在。でもカルト映画風のケレン味溢れる演出や映画オタク的小ネタ*2は控え目で、映画の作りはQT作品にしてはかなり正統派。正統派であるからこそ脚本や演出のクオリティーの高さが逆に際立っていて、創作無国籍料理のカリスマシェフが伝統的なフランス料理を作っても他の誰よりも美味かったみたいな。

本作では、言語の違いと(その言語が重要な要素を占める)文化の違い、その違いがどのような結果をもたらすかが重要なテーマとして据えられていて、ハリウッド映画としては珍しくフランス人キャラクターはネイティブの役者がフランス語で演じるし、ドイツ人はドイツ語で話す。全てのキャラクターは彼らの文化的なバックボーン*3をベースに行動し、互いに干渉し合う。この衝突の最たるものが戦争であり、だからこそ流暢に4カ国語を操り、ユダヤ人を含めた多くのヨーロッパ地域の文化的バックグラウンドを理解することのできるハンス・ランダ親衛隊大佐は、ナチ支配下のヨーロッパ文化圏ではほとんど全知全能、劇中最強の人物として君臨する。しかし、そのランダ大佐も、彼が理解していた世界の外からやって来た(南部)アメリカ人の圧倒的なバイオレンスには無力だったりするあたり素晴らしい。

ランダ大佐を演じ、圧倒的な存在感を現すクリストフ・ヴァルツさん以外では、ショシャナを演じるメラニー・ロランさんが印象的。衝撃的なくらい美人という点で。

あとQTの足フェチっぷりは本作でも健在なので、映画からはカットされているけど本編の数十倍の尺があるであろう足アップ映像がQTの家にあることが想像に難しくない。というか絶対ある!

*1:冒頭の牧場小屋でのシークエンスとか、パブのシーンとか最高すぎ

*2:第二次大戦前の古い映画の話題が多くて、個人的にピンとこなかったせいもあるけど

*3:「ドイツ人はルールと規則を愛し、論理的で事務的で女にはモテない」とか「フランス人はエモーショナルで情熱的、女性は美しく誰もが演出過多な女優のよう」とか、「イギリス人は気取った言い回しを好み、キザで格好付けでマイク・マイヤーズのように喋るけど、肝心な時に役に立たない」とか「(特に南部の)アメリカ人は暴力的で野蛮、単細胞で個人が如何にヒーローになるかしか考えておらず、組織や上の命令は二の次」とか、ステレオタイプではあるが同時に真実。