Frozen River

adf2010-02-22


僕の敬愛する映画監督であるQTがサンダンス映画祭で絶賛!確かにクオリティーが高く感情に響くような力を持つ素晴らしい作品。「レスラー」がそうであったように、本作は『負け犬』映画の系譜に連なっている。しかし主人公がその『家族』の関係性は二作品で大きく異なる。弱った自分自身の安息場所として娘を求めるだけだった「レスラー」とは違い、本作の主人公にとって2人の息子は彼女の行動原理の全てを総べる程大きく絶対的なものとして存在している。それは父娘の関係性とは全く異なる母息子の関係性、そして母親の情念から導き出されており、母親という存在はその呪縛から逃れることができないことを示している。だからこそ本作の結末で主人公の下すある決断は、その本来の内容自体よりも遥かに複雑で深い意味を持つ。

本作はアメリカのホワイトトラッシュ的な貧困*1を見事に描いていて、特に素晴らしかったのは、小銭をかき集めてなんとか7ドルちょっと分だけガソリンを入れることができた主人公が、車の中でラジオが地元の子供達が催すクリスマスのチャリティーイベントの参加料が『たった』5ドルだと伝えるニュースを聞くシーン。

*1:アフリカの難民やインドのスラムのように常に死の危険にさらされるわけではないけど、99セントストアで働き、トレイラーで生活し、週末は僅かな希望を求めてインディアンレザベーションでビンゴに興じ、お金のない日の夕食はポップコーンで済ませざる得ないような生活