渇き

adf2010-03-07


オールド・ボーイ』のパク・チャヌク監督の最新作、韓国映画。僕の中で、今、最も信頼できる俳優ことソン・ガンホ*1さん主演ということで映画館に足を運んでみたのだけれど、全ての面でとにかく「やりすぎ」な作品だった。

ソン・ガンホ演じるヴァンパイアと化した敬虔な神父が欲望を抑えることに苦心しながらも、キム・オクビン演じる友人の妻との出会いにより、モラルと性的な抑圧からの解放され、セックス&バイオレンスに染まっていく。エロ、暴力、ブラックジョーク全てが針の触れすぎた「やりすぎ」な演出により描かれていて、官能的というより生々しく濃厚すぎるラブシーン*2や、吸血鬼カップルの血まみれ獲物狩り(解体含む)、後ろめたさにより見えてしまう死人を挟んでのファックシーンに至っては*3恐怖なのか笑いなのか分からない謎の感情に大いに心乱された。

ガンホさんはもちろん良い演技を見せているけど、それ以上にキム・オクビンさんが素晴らしく、本作は彼女の映画であるとも言える。幸の薄い長澤まさみのようなルックスの彼女が演じる人妻のキャラクターは、自らの欲望にどこまでも素直で、だからこそ強く恐ろしい。彼女は決して言い訳しない。神父が信仰を言い訳にして自らの欲望を抑圧し続け、欲望に負けたことの言い訳もまた信仰に求めるのとは対照的に。信仰が欲望に素直に向き合えないことに対する言い訳であるという視点は本作における重要なテーマだと思う。

本作へのいくつかの感想やレビューが語るように、この映画は「ハッピーバースデイ」のシーンで終わるべきだったのかもしれない。そういう意味でも「やりすぎ」ではあるけど、その後に描かれる欲望の限りを尽くすヒロインの姿*4や、ラストシーンで繰り広げられる神父とヒロインのコント的なシークエンスは個人的にすごく好きなので全然蛇足だなんて思わないし、寧ろ絶対必要だと思う。

*1:ポン・ジュノ作品での存在感は言わずもがな、『グッド・バッド・ウィアード 』も素晴らしかった。

*2:しかも長い

*3:登場人物のリアクション含め

*4:色々ばれちゃうシーンのはっちゃけっぷりが素晴らしすぎる。嘘泣き、てへっ☆、顔面パンチ!のコンボ