SUPER

adf2011-08-08

ジェームズ・ガン監督・脚本のブラックコメディ映画。これまでの人生で2つしか良い思い出のない冴えない男が、(その思い出の一つである結婚式を一緒に挙げた)最愛の妻*1を、ケビン・ベーコン演じるプッシャーにネトラレてしまう。そのショックでアレなことになってしまった主人公は、天啓という名の幻覚幻聴に支配されてダサいヒーローコスチュームに着替え、自らの抱えた怒りを巨大なレンチに込めて犯罪者たちの顔面に振り下ろしていく。ひったくりやドラッグの売人の顔を割っていたころはまだ大義名分があったけれど、列に割り込んできた奴とその彼女を血の海に沈める主人公の姿は単なる無差別テロリストでしかない。

ただ本作は暴力と正義をテーマとしたシリアスな話に収束していかない。サイドキックのボルティー*2というリアル狂人が登場し、彼女が見せる本物ならではのやり過ぎアクションによりストーリーは中年ダメ男の夢の世界へと振り切れる。ボルティのクレイジーで無鉄砲な行動は、地味で暗いダメ中年男視点から見たティーンエイジガール*3のイメージそのものであり、そこにあるのは無条件に自分を尊敬する無知で未熟なガールを自分の弟子/後継者に育て上げたいという「ゴーストワールド」的な願望(ただしスティーブン・ブシェーミの視点からの)の現れのように思えた。

そう考えると、最終的に主人公が夢想する光景も単なる理想の具現化な気がする。悪から救い出すというクライマックスだけが必要であり、自分より立派な男と出会い幸せな生活をおくってくれという自分勝手な思いを押し付ける主人公は、愚かだけれど悲しい*4

*1:リヴ・タイラーが演じる美しい元ジャンキー。標準装備の絶世の美女なのになんだか幸薄いオーラに加えて、再びドラッグの誘惑に勝てずビッチ堕ちまでしてしまうのだった。

*2:演じるのは俺たちのエレン・ペイジ!いつもの和風ボディ&空豆フェイスをコスチュームで包み、あんなことやったり、あんなことになっちゃったりする衝撃。顔の造形がマッチしているのかマスク装着時の方がキュートに見えちゃうので、自分の中で何かが目覚めたのかと思った

*3:色々とアウトなシーンがあるためか、劇中のボルティの年齢は20代前半に設定されているけど、ストーリーにおける役割を考えるとティーンを想定するのが正しいと思う

*4:絵(明らかに子供から送られたものではなく主人公が自分で書いたもの)が一面に張られた壁は、自宅のではなく精神病院のそれだったのではないかと思った