Let Me In

adf2011-08-15

スウェーデン映画『ぼくのエリ 200歳の少女』とその原作小説のリメイク。『クローバーフィールド』のマット・リーヴス監督が、スウェーデン版から同性感を引いて、モンスターへの愛を注ぎ込んだジャンルムービー。中性的なエリとは異なり、本作のアビー*1は如何にもガールネクストドアなルックで、故にスウェーデン版では友情の要素が強く幼く描かれた主人公二人の関係性は、本作ではより恋愛感情に近い性的*2な要素を感じさせるものとなっている。その為劇中でアビーが発する「私はガールではない」は、同じ言葉でありながらエリのそれとは違う意味で使われており、テーマ自体が大きく変わっている*3とも言えるので、スウェーデン版のファンであればあるほど本作への評価は微妙になりそう。私自身はスウェーデン版への思い入れがそれ程なく、ストーリー上の枝葉の部分*4が整理されシンプルになったことでエンターテイメントとしての質は本作の方が上だと思った。

幾つかの要素を省いたリーヴス監督のモチベーションは、アビーを如何に魅力的なモンスターとして描くかというところに集中しており、クロエ・モレッツ自身が持つ稀有な存在感*5によりその試みは概ね*6成功している。

(悲しき)モンスター映画としてのクオリティがこれだけ高ければ、そりゃあスティーブンキングは褒めるよなって思った。

*1:演じるのはヒットガールことクロエ・モレッツ!

*2:主人公の少年に『覗き』をさせるのは、彼が性的に目覚めていることを表していることを表しており、彼自身が幼児期から思春期への成長過程にあることを匂わせている。

*3:スウェーデン版の公開時にその処理の仕方が大きな議論を読んだカットも丸々存在しない

*4:ご近所さん達のサブストーリーがカットされ、主人公の父親も登場しない(電話の声だけで登場)。いじめっこの中の一人と途中ちょっと仲良くなる描写も無し。

*5:多分に撮影時の彼女の年齢による一瞬の輝きの効能は大きい

*6:多くの人が指摘するようにCGによるモンスター的な動きの描写は作品のトーンと合っておらず、成功しているとは言いがたい。