The Tree of Life

adf2011-08-26

寡作の映画作家テレンス・マリック監督・脚本による最新作。主人公/監督の思考の流れをまとめることなく超ハイクオリティで映像化するという手法で創り出された本作は、文字の変わりに映像で綴られた詩のよう。弟の死をきっかけに*1、そもそも生命とは何か、どこから生命は始まったのかを考えて、宇宙の誕生まで遡ってしまったが為に延々繰り広げられるNHKスペシャル的な映像は、壮大で美しくはあるけれどあまりの尺の長さに正直途中で睡魔に襲われた。ただその後に訪れる主人公の誕生から幼児期〜少年期の光景があまりにも美しく、スクリーンから溢れんばかりの多幸感にノックアウトされてしまった。宇宙や生命(生物)の誕生を遥かに超える程鮮やかで美しい、それが人間の誕生と成長!みたいな人間賛歌的な気持ちになった、監督の真意がそこにあるのかは分からないけれど。その後に待ち受ける思春期ならではの苦悩*2、特に自己の人格が形成される過程で父と母を客観的にとらえ始めるあたりの時代の何とも言えないあの感じとかも主にアルアル的な素晴らしさだった。

ジェシカ・チャステイン演じるママ上*3の全てを許して包み込むような優しさと、対照的に描かれるブラッド・ピット演じるパパ上が家にいるときの抑圧された感じとか、空気感が非常にリアルで自分の思い出を大スクリーンで上映されるかのような気恥ずかしさを覚えた。

願わくば、未来に存在しうる息子にとって、私は本作におけるブラッド・ピットのような父でありたいと思う。傲慢で理不尽な家庭における抑圧そのものでありながら、本当は弱く脆い多くの人間の一人でしかないことを成長した息子に見破られ、彼に葛藤とともに受け入れてもらえる、そんな父親に。

*1:はっきり示されないけれど母親の死も何となく諮詢されている

*2:もちろん性的なもの含む。ひらひらつるつるした感じの服フェチだったのか俺はあああ!みたいなのとか、裸足好きっていうかマザコンやんけ!みたいのとか

*3:あまりにも天使的な存在に描かれすぎていて、終にはリアル空飛んじゃったりするのはやりすぎだと思うたけれど