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adf2011-11-10

デヴィッド・ボウイのリアル息子、ダンカン・ジョーンズ監督の長編二作目。上映時間の大部分を通して描かれるのは、藤子F不二雄的なSF(少し不思議)な設定下で繰り広げられるサスペンスである。しかし本作の本質はそこにはなく、上映後の明るくなった映画館のシートに座る私のハートに残ったものは、ロマンチックでエモーショナルな文字通りの感動(感情が動くという意味の)だった。今年の暫定ベスト!

SF映画において最も重要なのはルールである」という持論を私は持っている*1。その意味で、本作で示されるルール*2は古典的な着想をスマートに発展させた素晴らしいものだ。しかしジョーンズ監督は自らが創り出したそのルールをエモーショナルで哲学的なアプローチで破ってしまうことで、本作を普遍性を持ったSF作品のクラッシック*3へと昇華させている。

本作のルールの持つポテンシャルの高さからか、別主人公でのテレビシリーズ化が決定しているそうだけれど、上述の反則技はルールの創造主たるジョーンズ監督にのみ許された一回限りのチートなので、本作ほど作品的な成功を収めることは難しいだろうけど、24やフラッシュポイントみたいなハッタリ演出の効いた駄菓子みたいなドラマもそれはそれで見たい。

*1:http://d.hatena.ne.jp/adf/20100730

*2:量子力学により再現された死んだ男の最後の8分間を、何度も繰り返すことができる。そこでの行動は、再現された8分間のシミュレーション世界に影響を与え(本来の過去とは異なる)変化をさせることができるが、(あくまで既に確定した過去であるため)現実世界には小指の先ほども変えることができない。

*3:ストップモーションのシーンの多幸感、そして再び世界が動き出した瞬間の多幸感を超えた感情の高まりに、自分がSFものであることを思い知らされた。