Animal Kingdom

adf2012-02-05

敬愛するクエンティン・タランティーノが、「トイ・ストーリー3」「ソーシャル・ネットワーク」に続く2010年第3位の映画に選んだという前評判を聞いて、観に行かないわけにはいかなかった。

本作で描かれるのは、犯罪者一家=ライオンの群れの王の交代という、ディスカバリーch的なシンプルなストーリーである。そこには複雑な時間軸のジャンプも驚愕の大どんでん返しもない。しかし*1大胆に省略しながらもスムーズにシーンを繋げる独特のリズムでの編集と、不協和音を効果的に使った音楽演出は、ストーリーの進行に併せて静かに(しかし確実に)観客の緊張感を高めていくことに成功している。映画は編集と音楽が命!なQTの本作への評価が高いのも納得だと思った。

キャストも素晴らしく、カリスマを持った大物のように振る舞いながらも実は自らも暴力と犯罪に捉えられた矮小なチンピラでしかないポープや、息子たちとの王国*2を守る為にはあらゆる策を講じ残酷な選択も厭わない祖母スマーフの存在感は特に際立っている。しかし最も印象的だったのは、主人公ジョシュアだった。マンチェスター・ユナイテッドのMFマイケル・キャリック似の地味なティーンであった彼が、狩られる側から狩る側にスイッチする時に見せる表情の変化はドラマチックなものではなく微妙なものではあるけれど、だからこそ恐ろしくリアル。

*1:重要な場面の描写を意図的に避け

*2: