The Girl with the Dragon Tattoo

adf2012-02-29

デビット・フィンチャー監督が、世界的ベストセラーが原作のスウェーデン映画「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」をリメイク!変態007なオープニングクレジットから158分、1カットも無駄なシーンのない、完璧主義者のフィンチャー監督らしさの溢れる作品だった。

原作は未読、スウェーデン版も未見なので、フィンチャー監督が施したアレンジについてはメディア*1を通じて間接的に知る情報以外は知らない。でも確かなのは、監督が本作をミカエルとリスベットの二人の物語としてデザインしていることだ。そのため、それ以外の枝葉の部分については大胆に刈り込まれている*2。ミステリーではあるけれど『謎』自体はそれほど重要ではなく*3、単純にリスベットのキャラクタデザイン*4や、リスベットとミカエルがデジタル&アナログを駆使する調査のディテール*5だったり、ビジネスパートナーとしてスタートした二人の関係性が徐々に変化していく過程こそが本作のコアだ。

リスベットを演じたルーニー・マーラはそのヴィジュアルのパワーで、全身をタトゥーとピアスで覆った攻撃的な外面と繊細で壊れやすい少女のような内面(素顔)が同居するアンバランスさを体現している。そんな彼女がミカエル*6と『謎』解きに取り組む中で見せる変化は、変則的*7ではあるけれど紛れも無く恋する乙女のそれである。007がボンドガールを落ち着かせるために抱くように、パニック状態のミカエルとまぐわることはリスベットにとって『謎』の供給源を失わないための手段でしかなかったのかもしれない。しかしセックス*8と調査の日々を経て、彼女とミカエルの間の関係性は変わっていく。リスベットはミカエルに従順になっていく、遂には「殺してもいい?」と彼に許可を問うまでに*9

最終的に(多少変則的ではあるけれど)ラブストーリーに帰結するフィンチャー映画は傑作説の信奉者なので、本作は多分BDまで買ってしまう*10のだろうと思う。プレイヤー持ってないけど。

*1:主に映画秘宝

*2:特にヴァンゲル家の人々の内面は描かれず、表層的なキャラクタの域を出ない。故に原作やスウェーデン版を知る人にとっては作品が薄っぺらくなってしまったと嘆くものもいるみたいだけれど、個人的にはこの判断は大正解だったと思う。

*3:品は幾分も良いものの2時間ドラマの域を大きく超えるものではない

*4:エログロ&スタイリッシュというフィンチャー監督の作家性を象徴する存在

*5:オフィスで調べものするときに是非真似したい感じ。

*6:初めて本気で謎解き(チェスゲーム)に取り組める相手

*7:多分にファザコン的な要素が混じっている

*8:酷すぎるモザイクの掛け方は、文化を持たない未開人の仕事のようだった。

*9:最後の謎を解くのも、リスベットからプレゼントを贈られるのも(ファザコン的な)父/恋人の彼の役目だ。でもミカエルは、ただ有能なパートナー兼ペット(猫の代わりにベッドを共にする相手)が欲しいだけだったりする。流石究極のリア充ジェームス・ボンド

*10:モザイク無しVer.が観たいからでもある、もちろん